撮影:川端由美
自動車ギョーカイでは、CESといえば、自動運転の発表が昨今の恒例行事となっている。きっかけはアウディが2015年のCES2015で、シリコンバレーで開発中の自動運転の実験車両をラスベガスまで約900kmを自走してきたことだった。
その翌年のCES2016では、(メルセデス・ベンツを擁する)ダイムラーが自動運転のコンセプトカーでラスベガスの市街地を闊歩したり、CES2017でもBMWが高速道路で自動運転中にアマゾンで買い物するデモを行うなど、枚挙にいとまがない。実は全米でもいち早く、ラスベガスが属するネバダ州では自動運転の車が走れるように法整備を行ったことも、自動運転の発表を後押ししている。
CES2020でも、ダイムラーがキーノートでアバターとコラボした自動運転の機能を積んだコンセプトカー「AVTR」を登場させ、アウディが自動運転の機能を積んだ電気自動車(EV)「AI:ME」を発表した。
映画『アバター』とコラボした自動運転の機能を積んだダイムラーのコンセプトカー「AVTR」。
撮影:川端由美
自動運転の話題は続いていたものの、当初、従来の“個人所有”を前提にした自動運転車が今にも街中を闊歩するかのような印象は遠のきつつある。むしろ、乗り合いサービスや自動運転による配送といった、所有を前提としない"MaaS(=Mobility as a Service)の領域でこそ実用化されそうだと感じた。
その好例が、フランスの大手部品メーカーであるヴァレオ(Valeo)が中国のフードデリバリーサービス大手「美団点評(メイチュアン・ディンピン)」向けに開発した「eデリバリー・フォー・ユー(eDeliver4U)」だ。
ラスベガスのCES2020会場周辺のクローズドエリアで走行する「eデリバリー・フォー・ユー(eDeliver4U)」。一部プレス向けに公開した。
撮影:川端由美
日本の読者には馴染みのないサービスと思われるので、簡単に解説すると、2018年に中国版UberEatsの「美団」と中国版「食べログ」の「点評」が合併して、ユニコーンとなったのだ。
直後に開催された昨年のCES2019では、「美団点評」がヴァレオとNVIDIAと手を組んで自動運転の配送サービスの開発を行うと発表していた。
それから1年後のCES2020では、ヴァレオ曰く「自律型の電動配送ドロイド」と呼ぶ自動配送ロボットがデモ走行するまでにこぎつけた。
「電動配送ドロイド」を体験してみた
座学は後回しにして、まずはユーザーとしての使い勝手を体験してみた。筆者も中国訪問時には、美団点評のサービスにはよくお世話になっているのだが、基本的には食べログ的なサイトでレストランを選び、そのメニューから注文をすると、美団と契約する個人のデリバリーサービスが主にバイクで自宅やオフィスまで食事を届けてくれるというものだ。
今回、ヴァレオが開発した自動配送ロボの「eデリバリー・フォー・ユー」では、スマホなどのデバイスから美団点評を経由して食事を頼むと、レストランに配送ロボットが自動で走っていく。レストランでは、できあがった食事を自動配送ロボットの指定されたボックスに入れる。
再び、自動配送ロボットが走り出し、注文者のところまで自動で走って食事を届けてくれる。自動配送ロボットが近づくと、スマホに注文ナンバーが表示されるので、それを入力すると、ボックスのドアが開いて料理を受け取れる仕組みだ。
ヴァレオが見せたアプリ。自分のアイテム番号が画面下の方に表示されている。
撮影:川端由美
やってきた「eデリバリー・フォー・ユー(eDeliver4U)」の液晶画面に、コインロッカーのように番号を入力する。
撮影:川端由美
すると、車両側面のロッカー風のドアが開き、配送された注文品の中身を取り出すことができる。
撮影:川端由美
注文に関するシステムはもちろん、美団点評のものを活用する。ただし、48Vシステムを積んだ「フル電動の駆動システム」や「2次元/3次元カメラ」、「LiDAR」(ライダー。赤外スキャナーの一種)、超音波センサーなどはすべてヴァレオが量産しているセンサー類だ。また、それらを使いこなす画像認識システムや自動走行のアルゴリズムもすべてヴァレオが提供している。
本体の上部、下部、さまざまな部分に環境認識のためのカメラやセンサーがついている。いずれもヴァレオが量産し、提供しているシステムだ。
撮影:川端由美
驚くことに、すでに北京の自転車専用道で最大20km/hまでの速度域で利用することは決まっており、美団点評向けに2020年に100台、2023年までに1万台の生産を予定している。加えて、美団点評以外のサービサーにも提供することも視野に入れている。
この車両に使われるシャシー(車台)はヴァレオによる独自開発であり、自動運転に関しても独自開発。NVIDIAは関与していない。デモ走行に使われた車両のスリーサイズは、全長×全幅×全高=2.8×1.2×1.7mとスリムだ。一回の充電で走れる巡行距離はこのテスト車で約100kmだが、電池の搭載量によっては延長も可能だ。同時に最大17個までの配送ができる。
フランス・スタートアップ向けには、人間に追従する機能を搭載
ヴァレオのセンサーとアルゴリズムを活用した開発例は、他にもある。フランスのスタートアップ・ツインホイール(TwinswHeel)社が開発した「TH03」と、写真はないのだが積載量が大きい「TH052」なる2機種の自立ドロイドにも搭載されている。
クルマではなく、いわゆるロボットでもない不思議なデザイン。すでにトゥルーズやパリでは実証実験が進んでいるとのこと。
撮影:川端由美
ボディーの前部にあるロゴ。
撮影:川端由美
赤い色とデザインからレトロな印象を受けるが、足回りの構造などをみるとしっかりと作り込んだ小型EVであることがわかる。
撮影:川端由美
前方に搭載されるカメラで前を歩く人を認識して、7km/hという低速で3~5m程度離れて人に着いていく、いわゆる“カルガモ走行"をする。
前者は重さ60キロ、後者は130キロの荷物を搭載可能だ。ヴァレオが得意とするLiDARと2D/3Dカメラの技術を搭載し、人物を認識して、その動きに追従する。
SLAMという「自車位置認識」の地図を作ることができるため、GPS信号のない屋内でも走ることができる。
フランスでは、パリやトゥールーズでの実用例では、法律に則って最大25km/hまで速度を高めることが可能だが、実際には人に追従するため、6km/hで走行している。ホイールの内側というユニークな部分に搭載される電気モーターは、最大出力4~12kWという小出力で、低速走行用のものだ。
自動運転に欠かせないHDマップの生成にも一役買う
実は、ヴァレオは大手サプライヤーの中では、唯一、LiDARを量産している。これまでに出荷した自動運転向けの車載LiDARの数は10万台にのぼる。
4本の走査線を持つ第1世代に続いて、今回は16本の走査線を持つ第2世代の「スカラー」が登場していた。単純に言えば、第1世代「スカラー」は自動運転車に搭載するために開発されたが、第2世代「スカラー」はデジタルマップを作るスタートアップに使ってもらうためのB2B製品としての用途が提案されていた。
具体的には、第2世代「スカラー」を前方に向けて搭載したテスト車では、HDマップ(高精度3Dマップ)をベースに実際に検知した環境情報をクラウドに順次アップロードして更新していく「ダイナミックマップ」を生成。加えて、従来の第1世代「スカラー」を左右に2機備えたテスト車が追従することにより、絶対精度10センチ級という高精度での地図の差分更新が可能になる「ドライブ・フォー・ユー・ロケート(Drive4U Locate)」を発表した。
この技術はすでにフランスの地図会社F4社に測定キットとして採用されているという。
……と言われても、なんのことだがチンプンカンプンと思う人も多いに違いない。噛み砕いて説明すると、GNSS(=Global Navigation Satellite System、人工衛星を利用した全世界測位システム)と同じ技術であり、「自車」と「4機の測位衛星」との距離をそれぞれ計算し4つの距離を求め、それらが交わる点を自車位置として決める技術だ。
日産「プロパイロット」やGM「スーパークルーズ」といった自動運転の技術にも、この技術が使われている。
これにより、ローカリゼーションアルゴリズムと認識システムを利用したダイナミックマップを生成する機能によって、車両の位置を非常に正確に特定できる。しかも、常に車両からの情報が入力されて、クラウド経由で(地図の)差分が更新される。
人間を「手助けしてくれる」補助ロボ型の自動運転は年内にも
もう一つ、興味深いのが、ヒュンダイと共同で開発中の「スポットロケーター」だ。スウェーデンの大手測定器メーカー・ヘキサゴン社の測位インテリジェンス部門や、大手モバイルネットワークオペレーターとも手を組んで、数センチの絶対精度で道路上にある車両の位置を特定する技術を確立している。
従来のGPSによる自車位置の測位が1.5~3m級の精度だったため、GPSだけで車線を特定したり、右左折時のガードレールとの距離を的確に保つことが難しかった。ところが、この技術を使うと、交差点のような複雑な場所でもセンチ級の絶対精度で自車位置の情報を得られる。
技術的な説明が少々難しくなったところはご容赦いただくとして、ヴァレオの電動化と自動化の技術を合わせて使うと、「自動配送ロボットがレストランの食事を運び」したり「保守メンテの作業者の後ろを工具を運ぶロボットが追従」したり、より人間の感覚に近い、(人間を手助けする)自動運転が実現するという未来……いや、そんな世界が、今年中にも現実になるワケだ。
ちょっと前まで自動運転に期待することが、呼べば自動で走ってくるナイトライダーの「ナイト2000」みたいなSF風の世界観だったことと比べると、CES2020ではより現実的に使えるようになったと言える。
(文、写真・川端由美)
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January 22, 2020 at 03:00AM
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