千葉県野田市で2019年1月24日に小学4年の栗原心愛（みあ）さん（当時10歳）が虐待され死亡した事件で、傷害致死や暴行、強要など六つの罪に問われた父勇一郎被告（42）の裁判員裁判が21日、千葉地裁（前田巌裁判長）で始まる。19日に公判前整理手続きが終わり、地裁は争点について、事件に至る経緯や事件の状況と公表した。勇一郎被告が法廷で何を語るのか注目される。判決言い渡しは3月19日の予定。
捜査関係者によると、勇一郎被告は逮捕直後に「しつけのため、立たせたり怒鳴ったりしていた。シャワーを掛けたら動かなくなった」と供述したものの、容疑については「覚えていない」などと否認。その後、黙秘に転じたという。
事件を巡っては、女児が虐待を訴えた学校のいじめ調査アンケートの写しを市教委が勇一郎被告に渡し、県柏児童相談所は、女児が心的外傷後ストレス障害（PTSD）などと診断されたにもかかわらず一時保護を解除するなど不適切な対応が明らかになっている。
証人尋問では、一時保護解除直後などに女児と一緒に暮らした祖母らも出廷を求められており、児相や市、学校の対応も含め、女児が死亡するまでの詳しい経過が明らかになる可能性がある。公判は3月9日の結審までに10回開かれ、うち証人尋問は6回で延べ11人が出廷する。被告人質問は4～6日にある。
起訴状によると、勇一郎被告は19年1月22～24日、女児に食事を与えず、浴室に放置するなどして十分な睡眠を取らせず、冷水を浴びせるなどの暴行を加え、女児を死亡させたとしている。17年11月～19年1月には、女児の頭を殴ったり、顔や胸を圧迫するなどして全治約1カ月のけがをさせたりした。また、女児の母親（33）＝傷害ほう助罪で懲役2年6月、保護観察付き執行猶予5年の判決が確定＝に対しても顔を殴り太ももを蹴る暴行を加えたとされる。【加藤昌平】
◇栗原心愛さんが死亡した虐待事件の経過
＜2017年＞
7月上旬 心愛さんの母親の親族が沖縄県糸満市に（父勇一郎被告から女児への）どう喝と（母親への）DVを相談
9月1日 女児が糸満市の小学校から千葉県野田市内の小学校に転校
11月6日 女児が小学校のいじめアンケートに「お父さんにぼう力を受けています」と記入
7日 野田市から連絡を受けた県柏児童相談所が女児の一時保護を開始
12月27日 児相が一時保護を解除し、女児が父方の親族宅に移る
＜2018年＞
1月15日 女児が書いたアンケートの写しを野田市教委が父親に渡す
18日 女児が野田市内の別の小学校に転校
2月26日 父親が女児に「お父さんにたたかれたというのはうそ」と書かせた紙を児相職員に示し、「家に連れて帰る」と要求
28日 児相が「虐待の兆候がない」などとして、自宅に戻してもいいと判断
3月19日 児相が小学校で女児と面談。児相職員に紙は父親に書かされたと告白
＜2019年＞
1月7日 父親から小学校に欠席の連絡
24日 女児が遺体で発見される
25日 父親を傷害容疑で逮捕。その後、傷害致死など六つの罪で起訴
6月26日 傷害ほう助罪に問われた母親に、懲役2年6月、保護観察付き執行猶予5年の判決
11月25日 県の第三者検証委員会が報告書を知事に提出。「女児は救える命だった」として児相や野田市の対応を批判
＜2020年＞
1月23日 野田市の再発防止合同委員会に専門家の検証報告書が提出される。「命を奪ったのは公的機関に所属する大人への（女児の）不信感だった」と指摘
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February 19, 2020 at 07:15PM
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