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ゆっくりすいすい 電気自動車(グリスロ) 農村の“足”期待 - 日本農業新聞

 時速20キロ未満で公道を走る電気自動車「グリーンスローモビリティ(グリスロ)」が、農村で注目を集めている。改造したゴルフカートなど4人乗り以上の小型車で、小回りが利き、中山間や急勾配、道幅が狭い集落でも運行が可能だ。公共交通機関の空白地域では買い物や病院に行く高齢者の移動手段として期待され、各地で実証実験が進む。(鈴木薫子)
 

高齢者安心「実証」進む 島根県大田市 岡山県笠岡市


 グリスロは二酸化炭素(CO2)排出量が少ない電気自動車で、家庭用コンセントで充電が可能だ。4人乗りの場合、1カ月の電気代は2000~3000円と、比較的維持費を抑えられる。車幅は4~7人乗りがおよそ133センチで、軽自動車(148センチ以下)よりも小さい。

 島根県大田市は、世界遺産の石見銀山遺跡のある大森町地区で、昨年12月中旬から実証実験に取り組んでいる。国の事業を利用し、6人乗りゴルフカートの改造車を2台導入した。

 専用の停車所を12カ所設置し、地元のレンタサイクル業者が1日6便を運行する。運賃は無料。1カ月半で延べ1000人超が利用し好評だ。

 同地区に住む松場忠さん(35)は「スピードが遅くお年寄りでも安心感がある。開放的で気軽に乗れる点が使いやすい」と話す。

 高齢化率が41%の同地区は江戸時代からの武家屋敷が並び、約400人が暮らす。2008年にバス路線がなくなり、公共交通機関の空白地域。病院に向かうバス停から最も遠い場所は約3キロある。

 高齢者は現在、徒歩や自分で車を運転して何とか過ごしているが、「今後は高齢化率が一層高まり免許返納も進めば、交通手段がなくなる人が増える」と市観光振興課は懸念。「狭い道幅を走行でき、安全性が高いグリスロに期待している」

 現在の利用客はほとんどが観光客だが、住民の利用を促そうと、2月中旬から住民利用に限定した新たな運行も始める。カートの現在地を電光掲示板に表示するシステムも構築中だ。同市は実証を3年で行う。

 島しょ部での普及にも期待がかかる。岡山県笠岡市は高齢化率69%の笠岡諸島で昨年9月に実証実験した。運行した3島のうちの一つ高島は、燃油調達ができるガソリンスタンドがなく、道幅も狭いため、車が走行できない。「住民は基本的に徒歩で生活している」と市企画政策課は話す。

 約2週間にわたり地元のNPO法人が4人乗り1台を無料運行し、延べ約600人が利用した。市は本格運行に向け導入費用や運賃などについて検討していく。
 

本格運行で住民支える 松江市


 松江市橋北地区では4月から有償で本格運行が始まる。社会福祉法人みずうみが、4人乗り2台と7人乗り1台の計3台を、同地区の急勾配が多く高齢化が進んでいる4団地で運行する。

 ルートは二つ。一つは3団地が対象で予約制。利用者が目的地を設定する。平日午前9時半~午後0時半は無料、午後0時半~2時は1日100円で利用できる。もう一つは残り1団地で、団地内で運行する移動販売車と利用者の自宅の往復。火、木曜日の午後2~4時で無料で買い物客を送り届ける。

 年間運行費は約70万円を見込み、協賛会社などの寄付や広告費で賄うという。1台300万円を超える4人乗りの導入費は国の事業で半額助成を受けた。同法人の岩本雅之理事長は「本格的な有償運行を軌道に乗せ、住民の移動をサポートしたい」と話す。
 

国も支援


 国土交通省によると、グリスロを導入する市町村は松江市で全国5例目となる。東京都の町田市や豊島区、広島県福山市、大分県姫島村が導入済みだ。同省が2018年度、環境省が19年度から各地で実証実験を支援しており、19年度は全国14地域が実証実験に採択された。
 

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February 05, 2020 at 05:02AM
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