元記事:Amsterdam⇒Paris With Renault ZOE — Hypermiling While Hyperventilating With 0% Battery Charge by Jos Olijve on 『CleanTechnica』
ルノーの記者発表会に招待されて
ルノーにパリで行われる『トゥインゴZ.E.』の発表イベントに招待されたとしたら、あなたならどうしますか? オランダから電車で行くか、飛行機で行くか、それともルノーの電気自動車を運転していくでしょうか。
私達は新しいルノー・ゾエに乗っていくことに決めました。ミッションは簡単そうに見えましたが、最終的に目的地のパリには電池残量0%で到着しました。これはハイパーマイリング(電費を最大限に向上する運転)、ハイパーベンティレーション(過呼吸発作)、そしてゆったりとした旅行を楽しむお話です。
いざ、パリへ!
私達はオランダにある自宅を2月19日水曜日の朝10時に出発しました。ナビによるとパリまでの距離は465kmで、所要時間は運転5時間に充電1時間の計6時間です。距離は正しく出ていたのですが、実際にかかった時間は11時間半でした。この余分にかかった5時間半は、充電そのものと、機能している充電器を探すのに費やした時間です。楽しくなかったとは言いませんが、意図的に楽しみを見つけるため休憩を取るということはしませんでした。これについては後述します。
85km走行後に今回の旅で初めて止まったのが、ベルギーとの国境にあるFastned(オランダの充電ネットワーク運営企業)の充電ステーションです。Fastnedのステーションは、太陽光発電用の屋根を支える支柱が明るい黄色になっていて、遠くからでも見つけられます。Fastnedは多くの場所に展開してユーザーから愛されており、古いテスラ・モデルSやモデルX用のアダプターも提供しています。
私の同僚であるMaarten Vinkhuyzen(CleanTechnicaで『むすっとした老人』として知られる常連)はFastnedのサブスクリプションに登録しており、充電カードやアプリを必要としません。ただプラグを車に挿すだけで充電ができます。50kWのDC急速充電器で30分充電した後、バッテリー残量は22%(11kWh弱)上昇しました。良く充電されたバッテリーと、Lサイズのコーヒー2杯で世界が明るく見えます。
ベルギーではすべてが以前のままで、道路はびっくりする程ひどいコンディションです。ベルギー連邦政府にとって、高速道路のメンテナンスは明らかに優先事項ではないようです…… こんな政府があるのですね。私達はゲントで高速道路を降り、そこから1マイル(1.6km)も行かない市中にあるAllego(オランダの充電インフラ企業)の充電ステーションを目指しました。充電体験は問題なく、支払いもGreen Flux(オランダのスマート充電企業)の充電カードで簡単にできました。
フランスの国境が60km圏内に見えてきました。ちなみにベルギーを縦断すると150kmしかないのですが、横断するとその倍の距離があります。
1時間半/180kmの運転後、パリ方面へ続く有料道路沿いの、サン=レジェにあるCorri-Door(フランス電力会社、ルノー、日産、VW、BMWなど6つの団体の電気自動車普及プロジェクト)の充電ステーションで車を止めました。しかし充電器脇の情報を見ると、Izivia(フランス電力会社の100%子会社での充電インフラ企業)充電パスが必要らしく、手持ちのGreen Flux充電カードが使えませんでした。充電パスがない場合、ガソリンスタンドでプリペイドカードが売られています。他の方法としてCorri-Doorのスマホ用アプリを使い、クレジットカードで支払うことも可能です。しかしプリペイドカードは売り切れで、アプリを有効化するのに充電パスが必要でした。充電パスはアプリを通じて自宅に届けてもらえます…… これはロードトリップには向いていません。
マッチする充電パスとプリペイドカードがなく、アプリも有効化できず、1時間13分後に旅を再開しました。ハイパーマイリングを学ぶ時が来たのです。
この旅の後自宅に帰ってしばらく経ってから、Corri-Doorが数カ月に渡りハードウェアに関する問題を抱えていたことが分かりました。公式サイト上で「いくつかの急速充電器が安全上の理由により無期限でご使用になれません」と掲示されていました。実際には、「いくつか」は214台中の189台なのですが。
さて道中、Corri-Doorの充電器でこの後2回無駄足を踏みました。ガソリンスタンドの店員とCorri-Doorの電話サービスセンターは問題を把握していないようでしたが、フレンドリーで助けにもなりました。片言英語、中学生レベルのフランス語、そして忍耐をかけ合わせてようやく受け取ったメッセージの意味は明確でした。「une borne(ターミナルは)」、「cassée(壊れている)」。(プロからのアドバイスです。これらの言葉を感覚で理解しなければなりません。)
夜の8時にパリの北にあるIKEAの駐車ガレージに車を停めました。バッテリー残量は9%で、目的地まで15kmの距離です。たった1つの充電スポットは日産リーフが使用中でした。30分後、オーナーが礼儀正しく車を移動してくれました。電気自動車のドライバーは、お互いに思いやって助け合うという点でバイク乗りに似ています。手を振りあうことはしませんが。
不幸なことに、私達に必要なACプラグが摩耗していて使えませんでした。ここで2度目の遅れ、45分のロスです。残された選択肢は再度ゾエをエコ・モードにセットし、トラックの後ろを走ってハイパーマイリングを続けることでした。
(編集注※「ACプラグが摩耗していて」という表現は原文のまま。CHAdeMOのプラグであれば、DCもしくはQCなのですが)
この日最後に充電に挑戦したのは、宿泊予定のAirbnb近くで1台設置されているリドル(スーパーマーケット)でした。しかし残念なことに、「hors service(故障中)」と発覚しました。夜9時半にようやくAirbnbに着き、ホストは私達がゲート裏にゾエを泊められるように待ってくれていました。バッテリーも、私達の気力の残量も3%でした。
光の都でのステイ
次の日一番初めにしなければならない仕事は充電の機会を探すことでした。Chargemap(充電器検索サービス)で見ると、昨晩泊まったAirbnbの場所から1マイル(1.6km)以内の大きな駐車場の1階に充電場所が表示されました。充電用コンセントは小さなドアの後ろにあり、駐車場のアテンダントがドアの開け閉めのやり方を見せてくれました。そしてそれが、ドアがすんなりと開いた最後でした。その後アテンダントが試行錯誤した末にようやくドアは解錠されたのですが、それが充電新時代の幕開けでした…… ここの充電器は利用不可能だったのです。
混雑するパリの道を通り、ぎりぎり時間通りルノーのある通りに着いた時には、ゾエのスクリーンはバッテリー残量0%を表示していました。私達は通常通りのフランス流もてなしを受け、ホストのEVプロダクト・プレス・オフィサーがすぐに私達を窮状から救い出してくれました。彼はゾエを普通の壁にあるコンセントで充電できるよう、特別なケーブルを使って会場入り口に間に合わせの充電ポストを作ってくれたのです。ちょろちょろとした電流で、その日の終わりまでに6%の充電ができました。
プレゼンの後、記者は質問をする機会を得ました。そこでMaartenは、「充電インフラ整備が不十分である中、なぜルノーは電気自動車を生産するのか」と、波風を立てるような質問を投げました。電気自動車の偉大な推進者として、フランス人ホストは彼の皮肉とこの質問が間違っていて欲しいとの願いを理解してくれました。しかし今、彼はパリでは少々評判の悪いジャーナリストになっていると思います。
帰り道
Corri-Doorの充電器を避ける必要があるのは分かっていましたが、それでも家に帰るのに13.5時間かかりました。ハイパーマイリング、普通充電器での充電、故障していない充電器の探索、多くのコーヒー、そして旅を楽しむこと……長い旅になるのは分かっていました。
【オリジナル記事編集者Zachからの注釈:これが、テスラが非常に人気である理由の1つです。テスラに関してはレアなケースを除いて充電器で冒険をする必要がなく、目的地をナビに入れるだけで自動的に必要な充電をするためのスーパーチャージャーを含んだルートを出してくれます。この機能は常にきちんと動いているようで、故障していたり、長い間放置されている充電器を避けるために豊富な充電器が用意されています。CleanTechnicaの読者は毎年のアンケートで長年にわたり、どの電気自動車を次に買うかの決め手にスーパーチャージャーの存在が外せない要素だと回答しています。この記事のような話が、直接的にしろ間接的にしろ、電気自動車購入の際に影響があるはずです。】
家に着きました
この旅で多くを学びました。ダッシュボードにあるルノーのEasy Linkよりも優れているナビ用アプリがあることも分かりました。
ルノー・ゾエのマニュアルには、Easy Linkアプリは「検索した際一番近くにある充電ステーションを表示し、リアルタイムで充電器が空いているかのアップデートをします」と書いてあります。しかし今回の経験では、Corri-Doorのような正常に動いていない充電器のリアルタイム情報は反映されていませんでした。
ジュネーブ・モーター・ショーになると思われる次の旅では、www.abetterrouteplanner.comを使う予定です。(※残念ながら今年は中止)
さらに、アプリは最新情報に更新されていませんでした。例えば、一度非常に勾配の険しく、小さな袋小路に迷い込んでしまいました。バックしてそこから抜け出すのはかなり厳しかったです(そこで老人が傾斜のある庭いじりをしていたのを見るに、地元の人にとってはそうではないのでしょうが)。
アプリはスピード制限の変更にも追い付けていませんでした。恐らく地図データではなく、カメラに依存し過ぎているのではないでしょうか。アプリはちょくちょく正しい方角や一方通行の道路を無視していました。
リドルがベルギーで1時間、フランスで30分の無料充電を提供していることも分かりました。パリにはきちんと機能している充電器が多くあることでしょうが、私達は世界一の充電インフラがあるオランダに住んでおり非常に幸せです。
今回一番のレッスンは、ルノー・ゾエ Z.E. 50 ファースト・エディション(バッテリー容量は約23kWh)は長距離を短い時間で運転するのには向いていないということです。凍るような気温の中、急いでいるのであれば、200kmの旅でさえ不可能です。
さて、これらのデメリットはゾエを強者テスラやハイブリッドに乗り換えて、スローな旅を止める理由になるでしょうか? 我らがJohan Cruijff(オランダの有名なサッカー選手)は、「すべてのデメリットはそれぞれメリットを同時に併せ持つ」と言いました。先駆者になるのは楽しくもあり、油断もできなくなります。バッテリーが3%まで落ちた際に出る過呼吸発作のためのエクササイズがあるのを覚えておきましょう。
最後に、車がゆっくりと村の広場で充電している間、地元のバーでフランスの新聞紙Le Canardをじっくり読み解く時間がありました。もし電気自動車を運転していなかったら、マクロン大統領お気に入りのパリ市長選候補、Benjamin Griveaux氏のセックス・スキャンダルについて知ることはなかったでしょう!
(翻訳・文/ 杉田 明子)
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March 30, 2020 at 12:44PM
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