欧州自動車運輸連盟(ECG)は3月23日、新型コロナウイルス問題に伴う欧州自動車産業の現状についての分析と今後の見通しを明らかにした。これによると、欧州内の大半の自動車生産拠点は一時的な稼働停止状態だが、その原因はイタリア、フランス、ベルギー、スペイン、英国、ドイツ、オーストリア、ポーランド、チェコ、スロバキア、ハンガリーなどの欧州諸国による都市封鎖、隔離及び国境措置にあると指摘。商品・貨物の輸送については制限されていないにも関わらず、自動車生産拠点が稼働停止に追い込まれた原因として、EU域内での(人の移動制限による)労働力不足を挙げた。これが需要低迷と共に同産業にとって二重の打撃になったかたちだ。
ECGによると、欧州からの自動車部品供給と欧州向け輸出に依存している、欧州域外の生産拠点も影響を受けている。ルノーのモロッコにおける2工場、BMWの南アフリカ工場、ボルボのサウスカロライナ工場、アウディのメキシコ工場なども稼働停止に追い込まれたという。また、この時点で稼働しているメルセデスのアラバマ工場、BMWやフォルクスワーゲンの米国工場も同様の部品不足に直面することが予想されるとする。
また、ECGの調査チームの報告書によると、最悪のシナリオでは欧州市場での2020年の自動車販売は前年比で17%減少するとしている。また、短期的な自動車需要の低迷は今後数カ月続き、先ず欧州で、続いて米国の自動車市場が激しい打撃を受けるとしている。
他方、楽観材料として、(1)中国は新型コロナウイルスを制御している様子で、経済活動は再開に向けて動き始めたと見られること、(2)欧州と米国で厳しい新型コロナウイルス封じ込め措置を強化し、大型の財政支援措置や景気対策が打ち出されていることを挙げ、景気後退は避けられないとしても、パンデミックの加速を抑え雇用と需要の支えがあれば長期にわたる深刻な不況は回避できるとの見通しを示した。
一方、欧州産業界から新型コロナウイルス対策への社会貢献事例を紹介する動きもある。デジタルヨーロッパ(欧州情報通信民生電子技術産業協会)は3月24日付の声明で、同協会の会員企業・産業団体による、新型コロナウイルス対策への教育・医療面などでの貢献事例を紹介した。欧州でも「在宅勤務」「教育機関の一時休止」「医療機関の混乱」などが共通の課題となっており、情報通信産業としてそれらの課題への解決策提供で果たす役割があるとしている。
具体的には、デンマーク商工会議所(ERHVERV)が遠隔教育を支援するプロジェクト(EdTech Denmark)として、教員と生徒が授業を継続するための無償のオンライン学習プログラムを導入した事例や、ドイツの企業向けソフトウエア最大手SAPが企業従業員の遠隔作業を支援するソフトウエアを無料公開している事例などを紹介している。
(前田篤穂)
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March 26, 2020 at 09:52AM
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