ホンダはN-BOXが驚異的な販売をマークしている。そのいっぽうで、軽自動車メーカーになってしまったのか? と心配になるほど、そのほかのモデルの販売が思わしくない。
N-BOXが売れているのはすばらしいが、ホンダファンならずとも単純に喜んではいられない事態なのではないか。
新型フィットの登場で久々にホンダ車の販売が盛り上がっているが、登録車の苦戦は何が要因になっているのか? ホンダの現状やニューカー戦略、販売状況について考察する。
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ホンダの新車販売の52.6%が軽自動車
2019年度(2019年4月~2020年3月)の販売データが公開された。日本自動車販売協会連合会(自販連)、全国軽自動車協会連合会(全軽自協)によると、ホンダは登録車が32万2282台、軽自動車が35万7402台となっている。
このデータから、2019年度にホンダが販売した新車の52.6%が軽自動車ということになる。ただこれは2019年度に限った話ではなく、N-BOXが登場してから軽自動車の販売比率が飛躍的に高くなっている。

N-BOXは2011年に初代、2017年に現行の2代目が登場。もはや敵なしといった人気で驚異的な販売をマークし続けている。2019年度のホンダは軽自動車で、ダイハツ、スズキに次ぐ第3位の19.3%のシェアをマークするまでになっている。
ホンダは新型フィットが2月から販売を開始し、初のフル販売となる2020年3月は1万4845台を販売し、トヨタカローラの1万6327台に次ぐ2位に入り幸先のいいスタートを切っている。
しかし2019年7月にデビューしながらも電動パーキングブレーキの不具合により生産中止となっていたN-WGNが販売を開始。N-WGNは多くのバックオーダーを抱え人気も高いので、フィット単体ではホンダの乗用車比率を激変させることはできないだろう。

ホンダはこれまでに爆発ヒットするモデルとそれ以外の車種という構造となることが多い。初代オデッセイ、初代フィットの時を見てもおわかりだと思う。
そう考えると、爆発ヒットしたモデルが軽自動車のN-BOXだったから軽自動車比率が上がっているだけ、という受け止め方もできる。
N-BOXがユーザーから大々的に支持されて販売絶好調なことは歓迎すべきことで否定するつもりはないが、ホンダの戦略を見ているといくつか気になる点も存在する。

上級移行に失敗
ホンダ車スポーティ、手軽という点がユーザーからウケて販売を伸ばしてきた。また、トヨタや日産にない独創的な発想がクルマに盛り込まれている点も評価が高い。
トヨタカローラ、日産サニーと真っ向勝負するのではなく、独自のスタンスで進化を遂げユーザーをつかんできたシビックも上級移行に失敗してしまった。
グローバルカーとして仕向け地により販売するバリエーション、ボディなどを変えるなど、いろいろ模索したが奏功せず。

久々に日本マーケットに復活したシビックも、「これがシビック?」というユーザーの反応がすべてを物語っていると思う。
これはアコードについても言えることで、ボディは肥大化し、クラス上がった。新型アコードはクルマの出来もすばらしく、乗ればそのよさがわかるはずなので、今後ユーザーがどのように評価するか(買うか)を見守っていきたい。

上級移行は重要な戦略で、ホンダはクラスアップ、すなわち上級移行を積極的に推進したが、それが裏目に出ている感は拭えない。
元々ホンダは歴代レジェンドが個性を発揮しながらも高級セダンマーケットでトヨタ、日産の後塵を拝してきたとおり、上級モデル、特に高級セダンユーザーを抱えていないのが痛いところ。

海外主体のモデルが多すぎる
今や日本専用車というものはごくわずかしか存在しない。合理化、高効率化、さらにグローバル化により、マーケットの存在するところをターゲットに開発が進められるのが一般的だ。
これはどこのメーカーも似たり寄ったりで、日本市場で苦戦している要因となっていて、日本専用の軽自動車が売れるのはある意味当然だ。

ホンダの現行のラインナップを見ると、海外偏重の傾向が顕著だ。
ジェイド、オデッセイは中国マーケットがあったから存在しているし、アコード、インサイト、レジェンド、NSXは北米マーケット、シビック、CR-Vは海外全般、グレイスは東南アジアなどほとんどのモデルが海外主体となっている。

しかも2020年2月にデビューしたアコードは北米では2年間にデビューしているモデルだし、CR-VもSUVブームによりヴェゼルよりも高級SUVが欲しいという人の受け皿として急遽入れた感がある。
この点がRAV4を満を持して日本復活投入したトヨタとは大きな違いだ。
実際にホンダの日本専売車はステップワゴン、フリード、シャトルくらいのものだろう。ただ売れて当たり前の存在であるステップワゴンが、トヨタノア3兄弟、日産セレナに引き離されているのはホンダにとっては大きな誤算かもしれない。

売りやすいクルマにセールスパワーが集中
現在ホンダの新車販売の軽自動車比率が高くなっている理由としてはセールスパワーの問題もあると思う。
ホンダはモデルごとの人気グレードを調査すると、特別仕様車がトップにランクされることが多い。これは真新しさのある特別仕様車にセールスパワーが集中するためだ。日本の自動車メーカーでもホンダはこの傾向が最も強い。
ホンダはプリモ店、クリオ店、ベルノ店がそれぞれの専売車種を販売していたが、2006年3月1日から全店舗全車扱いに変更された(ホンダカーズは同年7月から)。
販売店としては売れるクルマを売りたいと考えるのは当然で、今は売れるN-BOX、N-WGNにセールスパワーが集中しているため、軽自動車の販売比率も上がる。

当然デビューしたてのフィットにも今後さらにセールスパワーは集中し、必死に売りにかかるだろう。となると、今まで以上にそのほかの車種の影が薄くなり売れなくなるのではないか。
ホンダは他メーカーのユーザーを取り込むよりも、自社モデルの喰い合いが多いという特徴もある。N-BOXを買いに来た人が上級モデルを購入するケースよりも、上のクラスのクルマを買いに来た人がN-BOXに流れるケースが多いのも痛いところだろう。
まとめ
ホンダの現状を見てきたが、新車販売における軽自動車比率がどんどん上昇していることにホンダとしても忸怩たる思いに違いない。
その解決策として海外主体のモデルをやめて日本専売車を増やすことは考えられないので、今後もこのやり方で新型車を開発していくだろう。
しかし根本は変えられなくても、日本人向けの仕様を設定したり、できるだけ導入時期のタイムラグをなくす、といった細かなことを積み重ねていくしかないだろう。
それから数少ない日本専売車の魅力アップは必須で、フリードにマイチェンでクロスターを設定したような手法は効果的だろう。

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April 11, 2020 at 05:00AM
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