軽自動車は危ない、と言われた時代は確かにあった。軽量化、安価に仕上げるためにボディ外板が薄かったりしたし、衝突安全性能など考慮されていなかったのも事実だ。
しかし、現代の軽自動車は安全装備も充実している。かつては高級車、高額車から順次下に拡大採用していくケースの装備も、軽自動車から搭載し始めるケースもある。
最新の軽自動車は、パッシブセーフティ、アクティブセーフティとも大きく進化しているが、安全装備関係はメーカーがそれぞれ独自の名称などを使って展開しているため、横比較が難しい。
本企画では、軽自動車を販売している中でホンダ、ダイハツ、スズキ、日産、三菱の最新モデルの安全装備を個別に見ていく。さて、どのクルマ、メーカーの安全装備が優れているのか?
文:諸星陽一/写真:HONDA、DAIHATSU、SUZUKI、NISSAN、MITUSUBISHI
【画像ギャラリー】~各種安全装備~軽自動車で初搭載したのはどんなクルマ?
世界に先駆けて日本が衝突軽減ブレーキの装着を義務化
高齢者のペダル踏み間違い事故がクローズアップされ、大きな社会問題となっています。
実はペダル踏み間違いについては、高齢者だけでなく運転経歴の浅い若年層の事例も多く報告されていて、ドライバー全体の問題として取り組まなくてはならない課題となっています。
そうしたなか政府は2021年11月以降に販売される新型車について、衝突軽減ブレーキ(いわゆる自動ブレーキ)の装着を義務化しました。
この義務化については世界中で実施していく旨の話ができていて、欧州では2024年前半以降に義務化予定となっていますが、日本は世界に先がけて装置の義務化に踏み切ります。
先に書いたように国産の新型車については2021年11月以降となります。国産の継続生産車、つまり2021年11月以前に発売されたクルマについては2025年までに装置の装着が義務づけられます。
輸入車の新型車については2024年6月頃、輸入車の継続生産車については2026年6月頃が期限。軽トラックについては2027年9月が期限とされています。
とはいえ現在発売されている国産車は軽自動車を含めて多くの車種が衝突軽減ブレーキを装備しています。それは軽自動車でも装着率は非常に高いものとなっています。
現在、日本では軽自動車が国民の足として非常に重要な役割を持っています。各メーカーの最近軽自動車について、安全装備の状況を調べました。
ホンダN-WGN
新車価格:129万8000~182万7100円
ホンダの先進安全装備は「ホンダセンシング」の名前で呼ばれています。N-WGNには基本「ホンダセンシング」が標準装備で、最廉価版のN-WGN Gのみ非装着車が用意されていますが、特殊な例として考えていいでしょう。
N-WGNに採用されているホンダセンシングは以下のものとなります。
このうち注目なのは衝突軽減ブレーキ(CMBS)です。
多くのメーカーの衝突軽減ブレーキが自動車や歩行者にしか対応していないのに対し、N-WGNの衝突軽減ブレーキは前方を横切る自転車にも対応しています。
また衝突軽減ブレーキの作動速度が5km/h以上とかなり低い速度から対応しているのも大きな点といえるほか、アダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)も渋滞時に対応。
先行車が停止すれば自動で停止、3秒以内なら自動発進、それ以上に長い時間の場合はスイッチの操作もしくはアクセルペダルを踏むことで再発進ができます。
ダイハツタント
新車価格:124万3000~197万4500円
ダイハツの先進安全装備は「スマアシ」の名前で呼ばれています。基本的な安全装備の10項目が「スマートアシスト」、その上の装備の5項目が「スマートアシストプラス」と呼ばれます。
タントのLグレードにはスマートアシスト非装着車が用意されます。タントLグレードスマートアシスト非装着車がすべての装備が省略されるわけでなく、一部の装備(といってもサイドビューランプのみ)が標準となります。
タント(除くスマートアシスト非装着車)に採用される「スマアシ」は以下となります。
「スマートアシストプラス」に分類される項目は以下となります。
「スマートアシストプラス」のうち、全車速追従機能付アダプティブクルーズコントロール(ACC)とレーンキープコントロール(LKC)はタントXターボとタントカスタムRSにのみオプションとして設定。
スマートパノラマパーキングアシストとパノラマモニターはタントL(スマートアシスト非装着車を含む)とカスタムLを除きオプション、サイドビューランプは全車標準となります。
衝突回避支援ブレーキ機能とアダプティブクルーズコントロールは同じセンサーを使うものの、上級モデルにのみアダプティブクルーズコントロールがオプションとなっています。
ダイハツの思想としては、安全装備は標準化するものの、快適装備はオプションとして少しでも価格に反映させようというものなのでしょう。
衝突回避支援ブレーキ機能は車両と歩行者に対応、アダプティブクルーズコントロールは全車速対応となっていますが、パーキングブレーキが機械式のため渋滞時で一旦停止した後はふたたび発進してしまいますので、フットブレーキの操作が必要です。
スズキハスラー
新車価格:136万5100~174万6800円
スズキの最新モデルはハスラーです。2019年の東京モーターショーにコンセプトモデルとして展示、2020年1月に市販モデルとして発表されました。
スズキの先進安全装備は「セーフティサポート」の名で展開されています。ハスラーのパワーユニットは全車がマイルドハイブリッド機構を採用します。
エンジンは自然吸気とターボがあり、それぞれに上級のXと標準のGが設定されています。自然吸気のGにはセーフティサポート非装着車が設定されています。
ハスラーの先進安全装備は以下のとおりです。
デュアルカメラブレーキサポートというのが衝突軽減ブレーキのことです。その名のとおり、2つカメラを使うシステムとなっています。対象となるのはクルマと歩行者で、自転車には対応していません。
アダプティブクルーズコントロールは全車速対応で、渋滞時などの停止時には自車も完全停止しますが、約2秒で保持を解除しますので、停止し続けるにはフットブレーキを踏む必要があります。
日産デイズ
新車価格:129万6900~181万1700円
日産の最新軽自動車はデイズとなります。日産は特に先進安全装備について愛称はつけていません。
プロパイロットがそれに当たると考えている人もいるようですが、プロパイロットはアダプティブクルーズコントロールとハンドル支援を組み合わせた装備の愛称なのです。
さて、日産の先進安全装備についてはほかのメーカーの装備に準じるものを先進安全装備としてピックアップし以下に列記します。
インテリジェントエマージェンシーブレーキ、車線逸脱警報、踏み間違い防止アシスト、フロント&バックソナー、インテリジェントLIは全車に標準装備なのですが、約半数のグレードでレスオプション化できるというようになっています。
インテリジェントエマージェンシーブレーキはクルマと人に対して機能します。プロパイロットはアダプティブクルーズコントロールと車線維持機能を合わせ持つ機能です。渋滞時は停止まで作動し、その後ブレーキの保持もされます。
ライバルに大きく差を付けているのがSOSコールです。SOSコールは事故などの際にオペレーターにGPS情報を自動送信するほか、あおり運転被害や強盗の際にスイッチを押して救援を求めるということもできます。
三菱eKワゴン/eKクロス
新車価格:132万~179万8500円
三菱のeKワゴン&eKクロスは基本的な部分は日産デイズと共通性を持ったモデルです。三菱eKシリーズと日産デイズは、両社が協同出資したNMKVがクルマを企画し、両社が協力し合いながら作り上げたモデルです。
日産は先進安全装備に愛称を付けていませんが、三菱は「e-アシスト」というネーミングを使っています。「e-アシスト」に含まれる装備は以下のとおりです。
つまり先進安全装備については、日産デイズと同じラインアップなのですが、唯一装備されないものがあります。それはSOSコールです。
日産は緊急自動通報システムの「Dコールネット」に加入しているのですが、三菱は未加入なのです。それが理由でeKワゴンとeKクロスにはSOSコールが装備されていません。
また、eKワゴンとeKクロスはデイズ同様に安全装備のレスモデルも設定されています。
軽自動車の安全装備の進化は止まらない!!
さて、各社最新の軽自動車について安全装備を確認してみました。今後は、レスオプションはなくなる方向にあるわけですが、現段階ではレスオプションが選べるというのがちょっと問題ありだと思います。
少なくとも一般道を走るクルマはレスオプションはやめたほうがいいでしょう。
各車を比較すると、衝突軽減ブレーキについてホンダのみが自転車に対応ということを掲げています。自転車の飛び出しなどは非常に多く、自転車に対応しているのは非常にうれしいことと言えます。
また、安全装備とは言えませんが、電動パーキングブレーキを使っているクルマはACCでの停止後にブレーキ保持ができることで運転の負担を減らしています。
負担が減ることは疲労が減ることなり、間接的に安全性を向上することになります。
日産のみが「SOSコール」に対応していますが、今後はこうした機構も多くのモデルに組み込まれていくことになるでしょう。
各車ともに踏み間違い防止装置を採用、ソナーやモニターで車両周辺の安全性確認もしやすくなっています。
このように軽自動車も安全性が向上していくのは必須で、多少の価格アップもやむを得ないでしょう。
現状、装備車未装備車の差、レスオプションの価格などを見ると7万~8万円程度がこれらの先進安全装備の価格とみられます。
しかし、採用車が増えれば量産効果によって、コストダウンも可能なので、今はそれに期待したいところです。
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忘れてはいけないのはどんなにクルマが進歩しても、最終的にそれを操作するのは人間で、責任を取るのも人間だということです。まずは漫然と運転するのではなく、きちんと運転する、ということを心がけて下さい。
そうすることで事故やトラブルは大きく減っていくものです。今一度、自分がいい加減な安全確認や、いい加減な運転操作をしてないか? 胸に手を当てて考えてみてください。
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February 01, 2020 at 09:00AM
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