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新型コロナウイルスの感染拡大でリーマン・ショック以上ともいわれる衝撃に襲われた自動車産業。アナリストたちは2020年の世界生産台数が前年比2割減るとのシナリオを描く。生産量が減るだけでなく、いつどこで生産がストップするかがわからない不透明な状況が続くことも予想され、リスクマネジメントも重要になる。自動車産業のサプライチェーン(供給網)はどう変化していくのか。製造業、もの作りに詳しい東京大学大学院の藤本隆宏教授にコロナ後のサプライチェーンのあり方について聞いた。

藤本隆宏(ふじもと・たかひろ)氏
1979年東大経卒。89年ハーバード大学ビジネススクール博士課程修了。90年東大助教授。96年東大大学院助教授。98年から現職。従来からの技術・生産管理の実証研究を統合し,設計論に立脚した広義の「ものづくり経営学」の構築について研究している。
新型コロナウイルスの感染拡大は日本の自動車産業のサプライチェーンにどう影響しますか。
東京大学大学院の藤本隆宏教授(以下、藤本氏):新型コロナウイルスの感染拡大はグローバル競争時代に起きた真のグローバル災害といえる。コロナ後の世界を予測することは難しい。世界規模での人の移動の制限が十数年に一度起きるのか、数年に一度なのか毎年なのか、いずれにせよ周期化する恐れがある。
そんな中でも、低賃金国との大競争や東日本大震災のような大災害を乗り越えてきた日本の優良な生産拠点は現場の競争力、復旧力、代替生産力、感染防御力の高さ故に、グローバル生産体制の中で相対的な重要性が高まる可能性がある。
もともと、日本は地震や水害といった製造設備に物理的損害を与える災害の多い国だ。磨き上げてきた災害への強さは国際的に見ても高い。例えば、トヨタ自動車はサプライチェーンの国際競争力も災害対応力も世界でトップクラスといっていい。
日本の自動車産業は世界的な地位が低下することになるのでしょうか。
藤本氏:そうは考えない。自動車産業は1970年代に国際競争力を得て米国を中心に輸出が拡大した産業だ。60年の四輪車国内生産が約50万台で輸出が約4万台、70年は500万台強(輸出が約100万台)、80年の約1100万台(輸出が約600万台)。90年の約1350万台(輸出が約600万台)、2000年の約1000万台(輸出が約400万台)と推移してきた。
10年はリーマン・ショックの影響も残ったが 、国内生産が1000万台弱、輸出が約500万台あった。19年は米中摩擦などあり弱含みだったが国内生産920万台強、輸出は約460万台。ちなみに海外生産はざっと2000万台弱なので、日本企業は合計3000万台弱で世界の約3割を握っている。
1990年のピークはバブル経済下の異常値だが、その後は海外生産を2000万台近くに急拡大しながら、国内生産体制は1000万台プラスマイナス100万台で輸出が500万台プラスマイナス100万台という、生産の半分を輸出する80年以来の構造を40年間維持してきた。
このシンプルだが驚くべき長期安定性は、国内工場の現場力・競争力を高位に保ちつつ、貿易摩擦や諸国の産業政策、輸送費、為替リスク、国内雇用の安定などを総合的に判断してきた、日本の主要企業の長期的方針なくしては説明できない。2020年は異常値になるだろうが、こうした産業的知略の歴史の重さをまず見ておかないと、増えた減ったという短期の一喜一憂に振り回されかねない。
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May 28, 2020 at 03:00AM
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東大・藤本教授「自動車生産、日本の地位は下がらず」 コロナ後の自動車産業を読む(2) - 日経ビジネス電子版
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