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〔コロナ後の日本〕自動車はV字回復の可能性、「所有」の価値を再評価=中西孝樹氏 - ロイター (Reuters Japan)

[東京 6日 ロイター] - 新型コロナウイルスの震源地となった中国からの部品調達で苦心した教訓から、日本車メーカーによるサプライチェーンの見直しが今後は進むと中西孝樹・ナカニシ自動車産業リサーチ代表はみる。これまで自動車は「所有から利用」への移行が見込まれていたが、再び所有の価値が評価され得るという。新車需要はV字型回復も可能で、食品デリバリーなど、モノのモビリティ(移動)サービスも増えていくとみている。

新型コロナウイルスの震源地となった中国からの部品調達で苦心した教訓から、日本車メーカーによるサプライチェーンの見直しが今後は進むと中西孝樹・ナカニシ自動車産業リサーチ代表はみる。写真は4月8日、北京市内で撮影(2020年 ロイタ/Tingshu Wang)

中西氏のコメントは以下の通り。

<リーマン後と違う状況、V字回復も可能>

コロナ禍の中で、人々の命を守るマスクの多くを中国から輸入していることをあらためて知り、調達先の分散の必要性を認識した。サプライチェーンも適切なレベルで見直す必要がある。生産を日本にどんどん戻すことはないが、日本に残すべき生産と、海外で取り組む生産を、しっかり仕訳することが求められる。

人命の安全が確保されれば、各国は需要の喚起に向けて生産活動の活発化にアクセルを踏むだろう。湖北省武漢市の都市封鎖(ロックダウン)を解除した中国をはじめ、欧州でも経済活動の再開に向けて動き出した。封じ込めは2カ月、長くて3カ月間で成し遂げないと財政破綻する。封じ込めに成功すれば、新車需要は戻る。リーマン・ショック時も、いったん新車需要は落ち込んだが、年明けから欧州で戻り始め、中国、米国でも上向いた。

中国経済は7月くらいからアクセルを踏むのではないか。中国の自動車市場は今後も世界最大であり続け、焦点は量から質へと変わる。これまでは新車購入者の約8割が初めて車を買う人だったが、今後は買い替えサイクルに入る。富裕層が多い中国では顧客を囲い込み、ブランド力を強化することが重要だ。ホンダ(7267.T)や日産自動車(7201.T)などはシェアを伸ばす余地がまだある。市場としての中国依存度が高くなるのは問題ではなく、他の市場とのバランスをとりながら中国を引き続き重視するべきだ。

米同時多発テロやリーマン・ショックの際と同様に、米国も需要喚起策を打ち出すだろう。それが米国車優遇策だとしても、米国経済が立ち直れば消費マインドが戻り、トヨタ自動車(7203.T)など日本車メーカーも恩恵を受けるはずだ。リーマン・ショック時は金融危機が「負の連鎖」の始まりで、その後に景気が悪化し、新車が売れなくなった。自動車メーカーが生産調整を始めたのはショックから3カ月後と遅く、在庫を抱えてしまった。今回は景気悪化と需要減少、工場停止が同時に起きたため、在庫はほぼない。需要さえ戻ればV字回復する可能性がある。

<「人」より「モノ」のモビリティ、自家用車に価値>

コロナ禍では「人」のモビリティが逆風を受ける一方、「モノ」のモビリティは確実に増えている。「ソーシャル・ディスタンス(社会的距離の保持)」が求められる中、人々は公共交通機関を避け、フードデリバリーやネットショッピングを盛んに利用している。

これまでは、米ウーバー・テクノロジーズ(UBER.N)に代表される複数の客が同じ方向に相乗りするライドシェアサービスなどが注目され、自家用車は時代に合わなくなったといわれていた。しかし、コロナが終息しても、今度は別のウイルスの感染拡大が起きるかもしれない。自動車を所有し、パーソナルな移動空間を得たいというニーズは高まる可能性がある。

中国では都市封鎖で公共交通機関が止まり、自動車を所有しない人は移動ができなくなった。ウーバーは欧米の主要都市で相乗りサービスの提供を一時停止した。自動車を所有することの価値は、新型コロナを機に大きく広がるのではないか。これまでトヨタもライドシェア企業に多く投資していたが、少なからず「バック・トゥ・ベーシック」があるかもしれない。

今後も技術の進化は自動車と結びつき、先端領域と伝統領域とに二極化する。技術を最大限に活用した無人配送などが伸びる一方、人の移動では他人が利用する車両にはあまり乗りたがらず、自分で自動車を運転することへの揺り戻しが生じるという具合だ。人、モノが一気にMaaS(mobility as a service)化するとみられていたが、新型コロナがブレーキをかけた。

SARS(重症急性呼吸器症候群)、MERS(中東呼吸器症候群)など新型ウイルスは数年おきに世界で流行しており、人類は今後も悩まされ続ける可能性がある。新型コロナは地球温暖化となんらかの因果関係があるとの仮説もある。世界は地球温暖化を止めるという思想を持ち続け、CO2(二酸化炭素)を出さない電動車を推進するだろう。さもなければ、さまざまなステークホルダーが納得しなくなるだろう。

(聞き手:白木真紀、編集:石田仁志)

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May 06, 2020 at 05:37AM
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