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日本自動車メーカーの命運握る中国市場。7月は各社とも2けた増。高所得者訴求の強みと死角 - Business Insider Japan

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Carlos Barria / REUTERS

コロナ禍で世界の自動車メーカーが総崩れとなる中、トヨタ自動車2020年は4-6月の決算で1588億円の純利益を確保した。

日本を含めた主要国で緊急事態宣言が出され、経済が止まった需要のどん底期に、トヨタが黒字に踏みとどまった最大の理由は、豊田章男社長が6月の株主総会で「リーマン・ショック時より200万台以上損益分岐点を下げることができた」と述べた通り、体質そのものの強さにある。

同社は2021年3月期のグループの世界販売の見通しも、従来の890万台から910万台に上方修正した。その数字を支える大きな市場が、コロナ禍をいち早く抜け出した中国だ。

実は中国では、トヨタだけでなく日産自動車、ホンダ、マツダのいずれも7月の販売台数が前年同月を超え、販売台数全体に占める日本メーカーのシェアは拡大している。自動車メーカーにとって、人口が多く成長も見込める中国は以前から重点市場だったが、日本や欧米で新型コロナウイルスの感染が再拡大し不透明感が高まる中、その重要性が一層高まっている。

コロナ禍で販売急落でもシェア上昇した日本勢

ホンダ

東風ホンダの武漢工場はロックダウンで1カ月以上にわたって稼働を停止した(2020年4月撮影)。

REUTERS/Aly Song

7月末から8月上旬にかけて、自動車メーカーの4-6月決算が次々に開示された。日産自動車は2856億円の最終赤字、ホンダとマツダはそれぞれ808億円、667億円の最終赤字を計上した。

2019年の販売台数が世界首位だった独フォルクスワーゲン(VW)も同期の最終損益は16億700万ユーロ(約2000億円)の赤字。米ゼネラル・モーターズ(GM)は7億5800万ドル(約800億円)の赤字で、自動車メーカー全体が生産停止や販売店の営業休止などで大きな打撃を受けた。

大手メーカーの多くが売上高を4~5割減らしており、トヨタの売上高も前年同期比40.4%減少した。決算からはコロナ禍の爪痕の深さとトヨタの強さが浮き彫りとなっている。

一方、中国市場では、トヨタだけでなく日本メーカーの勝ち組感が強まっており、今後の明るい材料と言える。

中国では1月下旬~2月に新型コロナの感染が拡大し、製造業の生産と店舗営業が1カ月以上にわたって止まった。ホンダと日産はロックダウンされた湖北省に生産拠点があり、深刻な打撃を受けた。

販売も大きく後退した。トヨタの2月の中国市場での販売台数は前年同期比70.2%減の2万3800台。日産は同80.3%減の1万5111台。ホンダは同85.1%減の1万1288台。マツダは同79%減の2430台だった。

だが同時期、中国市場で自動車メーカーは総崩れとなっており、シェアに目を向けるとむしろ日本勢の健闘が目立つ。中国汽車工業協会によると、2020年1-2月、中国ブランドのシェアは前年同期比2.5ポイント低下し、アメリカ、韓国、フランスメーカーもシェアを落とした。

シェアが拡大したのは日本とドイツで、日本メーカーは3.2ポイント上昇し23.2%、ドイツが0.9ポイント上昇し24.1%となった。

コスパの良さと品質が高所得者に訴求

トヨタ

2019年11月に上海市で開かれた中国国際輸入博覧会(CIIE)で、トヨタは世界初の量産燃料電池車(FCV)の「MIRAI(ミライ)」を展示した。

REUTERS/Yilei Sun

日本メーカーはコロナ禍の前から中国市場で人気が高まっており、市場全体が低迷する中でもその流れが変わらなかったと言える。

中国の自動車販売台数は2017年をピークに、2年連続でマイナスとなり、2019年は前年比8.2%減少した

特に中国ブランドが失速する中、2019年のトヨタは前年比9%増の約162万台、ホンダは8.5%増の155万4433台と販売を増やした。中国人の消費力向上によって、車を所有することそのもののステータスが薄れ、品質やメーカーを吟味する傾向が強まったことが背景にあると言われる。

中国の感染が落ち着き、経済活動に舵が切られると、自動車の販売台数は真っ先に回復した。2020年4月の販売台数は前年同月比4.4%増の207万台となり、22カ月ぶりにプラスに転じた。実際に販売をけん引したのは商用車で、乗用車は同2.6%減だったが、トヨタ、日産、マツダの日本3社は前年同月比で販売台数が増加した。

自動車販売台数

メーカーや業界団体の発表を元に作成。

その後も中国の自動車市場は拡大を続け、7月の販売台数は前年同期比16.4%増の211万2000台だった。6月までは微増だった乗用車も同8.5%増の166万5000万台となった。中でも日本企業は好調で、ホンダが2020年1月以来半年ぶりにプラスとなり、同17.8%増の13万6646台に達したほか、日産は11.6%増の12万945台、トヨタは19.1%増の16万5600台と、マツダ(同4.1%増の1万7750台)を除き3社が2けた増を達成した。

日本メーカーの好調の理由は、さまざまな分析がされている。

  • 普段はあまり値引きされないが、アフターコロナ商戦で値引き幅が大きくなり、欲しかった人が買い時だと判断した
  • 高品質、中古買取価格の安定、コスパの良さが評価されている
  • コロナ禍でも打撃が少なかったり、むしろデジタル化の追い風を受けた高所得者層の消費が先んじて回復した結果、ブランド力のある日独メーカーが恩恵を受けた

などと言われているが、共通しているのは、価格に見合った品質の高さが、コロナ禍でも消費意欲の衰えない高所得者層に訴求したという点だ。

テスラが開拓、中国新興メーカーが追うEV市場

テスラ

2020年1月7日、上海工場で生産した「モデル3」の購入者と交流するテスラのイーロン・マスクCEO(中央)。

REUTERS/Aly Song

アフター・コロナの勝ち組に入った日本の自動車メーカーだが、一方で「ニューノーマル」というより大きな将来軸で見ると、別のライバルと対峙することになりそうだ。

前述したように、7月の自動車販売台数は同16.4%増の211万2000台だったが、そのうち9万8000台がEV、ハイブリッド車など新エネルギー自動車だった。全体から見れば5%にも満たないが、販売台数は同19.3%伸びており、乗用車に限ると28%増だった。

2020年の中国での新エネ車の販売台数は100万台強と見込まれるが、中国政府がEV車の普及を経済対策の柱に位置づけ、今年で打ち切り予定だった補助金も延長したことで、短期的にも長期的にも成長が期待できる。

市場の拡大に大きく貢献しているのが、2019年12月に上海工場を稼働させたテスラだ。テスラは5月、小型EVセダン「モデル3」の価格を政府の補助金対象となる30万元以下に引き下げた。補助金も使えば日本円にして400万円弱で購入できる。

テスラは4-6月に世界で9万650台を販売(納車)したと公表した。中国乗用車市場情報連席会(乗聯会)によると、中国では同期に3万1000台を納車しており、世界販売の3分の1を占める。テスラは6月に、中国45都市に販売店を開設する方針を明らかにし、上海など大都市では店舗数を増やしている。

中国汽車工業協会はテスラの2020年の中国での販売台数を約10万台と予測しているが、この数字は生産能力に基づいて算出しており、生産拡大に比例して販売台数も伸びるだろう。

テスラをベンチマークに、2010年代に創業した中国企業も存在感を高めている。

2018年に米ニューヨーク市場に上場した「蔚来汽車(NIO)」をはじめ、創業者が中国でのテスラ車の最初のオーナーの一人で、7月にナスダック上場を果たした理想汽車、複数車種を発売して8月にニューヨークへの上場を申請した小鵬汽車(Xpeng)。

この3社はコロナ禍でも淘汰されず、テスラが開拓した中国のEV市場で、シェアを拡大すると見込まれている。理想汽車は2019年12月に中大型ハイブリッドSUV「Ideal one(理想ONE)」の量産化を実現したばかりだが、7月に2516台を販売した。1-7月の販売台数は1万2182台で、着実な成長ぶりがうかがえる。

4-6月は中国での販売が世界の42%占める

日産

日産は7月15日、クロスオーバーEV「アリア」を発表。中国市場でも2021年に発売を予定する。

日産自動車

乗聯会によると、世界の自動車販売台数に占める中国市場の比率は1-3月が22%だったのに対し、4-6月は42%をも占めた。

中国の専門家は今年の秋から冬にかけてコロナの第2波を警戒しているが、第1波の封じ込めでPCR検査やクラスター封じなど相当なノウハウを蓄積しており、今なお先行きが見えない日本や欧米に比べると、第2波にも迅速に対処できる可能性が高い。先進国の感染拡大が長引き消費が沈めば、中高価格帯の車種を展開する日独の伝統大手メーカーも、テスラや中国新興勢といった新興メーカーも、全力で中国市場を取りに来るだろう。

中国の自動車メーカーと5G自動車連盟を発足させた通信機器大手ファーウェイ(華為技術)でスマート自動車ソリューション責任者を務める王軍氏は、8月に登壇したイベントで「中国では将来的には30万~50万元(約450万円から750万円)の車種が、富裕層・高所得者をターゲットに市場を拡大する。この層は車の買い替え頻度が高く、新技術や新機能を好む」と発言した。

2021年にはテスラの7人乗りSUV「ModeI Y」の上海工場での生産が始まる。日産も8月、新型クロスオーバーEV(電気自動車)「アリア」を2021年に中国市場で発売すると明らかにした。どちらも価格帯は500万円~600万円台だ。

中国の高所得者の選別眼と消費意欲の高さは、現状では日本企業への追い風になっている。同時に、新しいものが好きで、ブランド力を重視する中国の消費者は、伝統にとらわれないエッジの効いた企業とも相性がいい。

日本メーカーは短期的にはアフターコロナでの追い風を取り込みつつ、ニューノーマルを視野に入れた中国対応が求められていくだろう。

浦上早苗: 経済ジャーナリスト、法政大学MBA実務家講師、英語・中国語翻訳者。早稲田大学政治経済学部卒。西日本新聞社(12年半)を経て、中国・大連に国費博士留学(経営学)および少数民族向けの大学で講師のため6年滞在。最新刊「新型コロナ VS 中国14億人」。未婚の母歴13年、42歳にして子連れ初婚。Twitter:sanadi37

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August 18, 2020 at 06:50AM
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