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野田洋次郎「お化け遺伝子」ツイートから考える「優生思想」の現在。才能を育てるシンプルな方法(QJWeb クイック・ジャパン ウェブ) - Yahoo!ニュース

野田洋次郎と乙武洋匡のツイート

《前も話したかもだけど大谷翔平選手や藤井聡太棋士や芦田愛菜さんみたいなお化け遺伝子を持つ人たちの配偶者はもう国家プロジェクトとして国が専門家を集めて選定するべきなんじゃないかと思ってる。/お父さんはそう思ってる。/#個人の見解です》(2020年7月16日) 日。この日、ツイート中に出てくる藤井聡太が第91期棋聖戦を制し、史上最年少の17歳で初タイトルを獲得した。先の投稿は、これを祝福する一連のツイートの中で出たものだが(ちなみに野田は一昨年、実在の棋士の半生を描いた映画『泣き虫しょったんの奇跡』で、松田龍平演じる主人公の親友を演じている)、しばらく経って物議を醸すことになる。たとえば、作家の乙武洋匡は7月25日、ツイッターに《「これぞ優生思想」という考え方をここまで無邪気に開陳できてしまうのは無知ゆえだと思う一方、私だって無知ゆえにトンデモ発言をしてしまっていることはあるかもしれない。そう思うとゾッとする。》と自戒を込めながら批判した。 優生思想(優生学)とは、《遺伝学の知識を応用して、ヒトの形質の悪化を防ぎ、改善を図ることを目的とした学問》で、19世紀にゴルトンというイギリスの遺伝学者によって提唱された(『旺文社 生物事典』)。その種類は、望ましい遺伝因子を持つ人間同士を結婚させるなどといった「積極的優生学」と、望ましくない遺伝因子を結婚制限、断種、隔離などによって排除する「消極的優生学」と、おおまかにふたつに分けられる。野田洋次郎のツイートは前者に当たるだろう。 これに対し、後者の消極的優生学の例としては、ナチス政権下のドイツで行われたユダヤ人虐殺や障害者などに対する断種の強制がよく知られる。ドイツ以前に優生学がいち早く隆盛したのがアメリカで、20世紀初頭より各州で優生学にもとづく断種が合法化され、1930年代には過半数の州に及んだ。1924年に成立した絶対移民制限法も、「劣った人種の移民増大でアメリカ社会の血全体が劣悪化するのを防ぐ」とする法律だった。日本でも戦後、1948年に成立した優生保護法により、遺伝性の病気のほか、精神病や精神薄弱、ハンセン病の患者も中絶や不妊手術の対象と定められた。このうちハンセン病は、遺伝病ではない感染症(しかも感染力は極めて弱い)にもかかわらず、戦前より隔離政策がとられ、断種手術が行われてきた。それは1996年の優生保護法の廃止までつづくことになる。 乙武洋匡は、前出のツイートのあと、YouTubeでも「優生思想はなぜダメなのか?」と題して、優生思想について先述のような歴史的背景を踏まえて解説し、たとえ積極的優生学であれ、人の命に序列をつけていいのかと疑問を投げかけた。乙武は先天的に身体にハンディキャップを持つだけに、こうした問題に敏感で、警鐘を鳴らさずにはいられなかったのだろう。しかし、大多数の人は、野田のツイートの問題性にすぐ気づかなかったのではないか。実際、くだんのツイートに批判の声が上がったのは、野田が投稿して1週間も経ってからだった。そこには、7月23日になって、難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者に対する嘱託殺人の容疑で医師らが逮捕されたことが大きく影響しているのは間違いない。そこへさらに、相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で入所者ら45人が殺傷された事件から4年を迎えるタイミング(7月26日)も重なった。逆にいえば、これらの件がなければ、野田のツイートがあれほどまでに注目されることもなかったはずである。 ■歌舞伎界への幻想、香川照之の場合 野田のツイートは、優生学という以前に、国家が個人の配偶者を選ぶという発想からして、婚姻は両性の合意のみに基づいて成立すると定めた日本国憲法にも反しており、その点でも論外である。ただ、彼を弁護するわけではないが、例のツイートは一面で、遺伝や血筋といったものに私たちが抱く幻想みたいなものを突いているようにも、私には思えた。 たとえば、芸能界やスポーツ界で2世や3世がもてはやされるのは、今に始まったではない。著名人の子供が表舞台に出てくると、親を知る者はどうしてもその面影を見て取ろうとし、少しでも似たところを見つけると喜ばずにはいられない。宇多田ヒカルがデビューした時には、同じく歌手である母親の藤圭子との類似が盛んに話題にされたし、私自身、歌舞伎役者の中村勘九郎・七之助兄弟の声や仕草に、父親の中村勘三郎の面影を感じると、思わず胸にグッとくるものがある。とりわけ歌舞伎の世界は、血筋によって継承されているというイメージが強い。ひょっとすると、市川團十郎のような大名跡をはじめ、歌舞伎役者は初代から連綿と血脈によってつながってきたと信じている人も多いのではないか。 だが、実際には、現在ドラマなどでも活躍する市川右團次や片岡愛之助などのように、歌舞伎とはまったく無縁の家に生まれた役者もけっして少なくない。市川團十郎家や尾上菊五郎家などの名家にしても、初代からずっと血がつながっているわけではない。ノンフィクション作家の石井妙子(ベストセラーとなった『女帝 小池百合子』の著者でもある)は、各界の著名人の家系を辿った著書『日本の血脈』(文春文庫)のうち俳優・香川照之を取り上げた章で、《そもそも歌舞伎は、血筋によって親から長男へと代々、受け継がれてきたものなのか。それが強まり固定化していくのは、むしろ近年の傾向ではないだろうか》と疑問を呈した。その上で、細かく実例(たとえば2013年に亡くなった十二代目團十郎は、「明治の劇聖」と呼ばれた九代目團十郎とでさえ血縁関係にはない)を挙げながら、先述のような歌舞伎界のイメージが誤りであることを立証している。 香川照之は6代続く歌舞伎役者の家の長男として生まれながら、両親である三代目市川猿之助(現・猿翁)と女優の浜木綿子の離婚により、母のもとに引き取られたがために、家業を継げなかったという悔しさをかねてより明言していた。石井が香川を著書で取り上げるきっかけには、そうした発言に対する違和感があったという。一方、先代の猿之助は、「血筋ではなくて大事なのは芸の力」とことあるごとに口にし、そのとおり歌舞伎役者の子供ではない者にも広く門戸を開いて、前出の市川右團次をはじめ大勢の弟子を育てた。そんな猿之助に、香川は俳優になって初めて対面した際、「あなたは私の息子ではない」とはっきり言われたという。しかし、猿之助のそうした態度は、2003年に脳梗塞で倒れたのを境に軟化していく。香川は2011年、父と一緒に記者会見に臨み、和解をアピールしながら、長男が五代目市川團子を、そして自身も九代目市川中車を襲名すると発表、翌年、歌舞伎の舞台を踏むことになる。この襲名に、マスコミのほか、歌舞伎評論家や歌舞伎好きを標榜する文化人も賛辞を送った。だが、石井はこうした風潮をよしとはせず、《芸のわかる観客がいなくなれば、自然と血脈や、知名度、分かりやすい親子物語が優先されていくのか。それは、こと歌舞伎界に限られたことではなく、今の日本社会全体を覆う、ひとつの風潮、あるいは、病理のように思える》とこの章を締めている。

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August 08, 2020 at 07:00AM
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